2026/02/26
研究開発型企業にとって、技術情報やデータは事業の根幹を成す資産だ。その管理をめぐり、注目すべき刑事事件が明らかになった。
線虫を用いたがん検査サービス「N-NOSE」を手がける HIROTSUバイオサイエンス は2026年2月、元従業員1名が不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の容疑で書類送検されたと発表した。警察による捜査を経て刑事事件として立件された点は、同法違反としては異例とも言える。
本件について同社は、第三者取材に対し、事件に至る経緯や社会的影響について詳細な説明を行っている。
同社が特に強調するのは、漏えいした情報の性質だ。 ヒアリングによれば、問題となった漏洩情報は、同社の技術開発の途中過程におけるもので、現在実用化されている検査工程とは異なる内容であったという。 同社は、退職後に外部へ提供された情報について、「技術的な文脈を欠いた形で提示され、結果として当社の実態とは異なる理解が広がった」と説明する。
同社が現在提供している検査サービスにおいて、当該情報に基づく手法は用いられていないとのことであった。
研究開発型ベンチャーでは、技術の信頼性が事業評価や資金調達に直結する。同社は、
といった点で、大きな影響があったとの認識を示している。
ベンチャーは会社のブランドが確立されておらず、資金的にも脆弱であることが多いため、会社や技術の信頼性をゆるがす情報が広まったら存続の危機に直面する。もしそれが誤情報であったとしたら・・・
今回の事件は、特定企業の問題にとどまらず、日本の研究開発型ベンチャー全体に共通する課題を浮き彫りにしている。
高度な専門性を有する人材に業務を委ねる一方で、
といった点は、多くのスタートアップが十分に対応できているとは言い難い。
本件のような会社のトップ層の行為のコントロールは、仕組みを作ることによっても管理することが難しい。
同社は今回の件を受け、これまでも進めてきた情報管理体制やコンプライアンスの強化をさらに強める方針を示している。研究成果を社会実装へとつなげるためには、技術力だけでなく、その守り方も同時に問われる時代に入ったと言えるだろう。
刑事事件に発展した「営業秘密侵害」
不正競争防止法違反をめぐるトラブルは、一般に民事上の紛争として処理されるケースが多い。実際、問い合わせた弁護士の全員が「刑事事件化はまれ」と回答した。
不正競争防止法違反については、悪質なものについては刑事罰が設定されている。同社は、警察が本件を重く見た理由について、行為の悪質性が大きかった可能性があるとの見解を示している。 同社は悪質性について、研究部門の実質トップだった人物が知財に関わる機密情報を不正に盗み出したこと、データに改ざんや加工、切り取りを加えて会社を攻撃する内容に変えたうえで、記者に漏洩して拡散させたことを挙げた。